言葉を覚えるには漢字の活用が有効

 言葉を覚えるにはともかく耳から聞かない事には始まりません。また、幼い子供は言葉を覚える天才ですから、絵本を読んで上げたり、話し掛けたりしている内に、沢山の言葉を身に付けます。しかし、更に効果的に言葉を覚える方法があります。順を追って説明します。 

1         目と耳から同時に
 人の五感のうち目と耳から入る情報が圧倒的です。また、目からの刺激が、耳から入る言葉と一緒に入ると記憶に残り易いのです。ラジオ放送よりテレ部放送の方が記憶に残り易い事でお判りでしょう。耳から聞いて覚えた事は三日後に10%しか残っていませんが、目で覚えた事は20%残り、目と耳を同時に使って覚えたものは65%まで残るそうです。(詳しくは、石井勲の著書「幼児のための日本語塾」の「漢字が開く世界」の「目と耳を同時に働かせる効果」をご覧ください。)
 親が子に絵本を読んで聞かせる時、子が膝に乗って一緒に覗き込みますが、この、目からの刺激によって一層効率よく言葉を覚えるのです。

 

2         漢字と仮名はどこが違う
 漢字は中国から伝わりました。最初は日本語の音を漢字で書きました。万葉仮名と言われるものです。これが行書体、草書体、更に変化して仮名になりました。一方で、漢字を日本語の音で読むことを始めました。訓読みと呼ばれるものです。万葉集の後期の歌は、漢字を訓読みして使ったものが増えて行きます。また、漢字を組合せて新たな言葉にする熟語では、当時の中国語の音(音読みと呼ばれるもの)も残し伝えました。漢字は音と意味の両方を持ち合わせますが、仮名は音しか表しません。
 現在残し伝えられている言語のうち、音と意味を表しているのは中国語と日本語だけです。他の全ては仮名と同じく音だけを表したものです。また、全ての言語の元を辿ると、音と意味を併せ持った文字に行き着きます。先人の知恵を直接継承している「漢字」を大切にしたいものです。

 

3         漢字の部品には意味が込められている
 「漢字は象形文字である。」と、人々は言いますが、漢字の中に象形文字は5%程度しか占めていません。漢字の90%以上を占めるのは「形声」「会意」と呼ぶ、意味と音とを持った部品を組合せて作られたものです。ですから、初めて見る漢字でも意味や音を推察する事が出来ます。例えば「整」は「束」と「攵」と「正」の三つが集まった文字で、それ等は更に二つの部品で構成されています。(更に詳しくは、例えば「石井方式 漢字の教え方」の「指導編」の「(3)小がっこぷにおける指導」の「体系的科学的な新しい漢字学習」を参照ください。本サイトの『石井勲の漢字教育館』に収納されています。)
 言葉が身に付いたと言えるのは、その意味とともに記憶できた時で、意味も分からずに音だけ真似ているのでは、九官鳥や鸚鵡と同程度と思われても仕方がないでしょう。

 

4         複雑なほど記憶の手掛かりが多い
 他人の顔を覚える時、平凡な顔は覚えにくく、特徴的な部分が多いほど正確に覚えるものです。髭を生やしているとか、眼鏡を掛けているとか、特徴点を捉えて記憶します。漢字も同じです。画数の多い漢字は書くのには難しいですが、記憶に残り易いので読むのは容易です。
 「蜂」と「はち」と「八」は、書くのが難しい順に並んでいますが、読むのが易しい順でもあります。「猿蟹合戦」の漢字絵本を読んだ子供は、たちまち「蜂」が読めるようになります。一方、「八」は、「しち」か「はち」か「きゅう」か分らなくなってしまう子供も多くいます。
 また、幼稚園児が「悪魔」という字を推察で読んでしまった例が、石井勲の著書に紹介されています。例えば、「頭がいい親の3歳からの子育て」の「第一章 「漢字」で幼児の脳がみるみる伸びる」の「漢字は幼児の脳には最高の栄養素」の「漢字は幼児の推理 文責能力を自然に引き出す」をご覧ください。本サイトの『石井勲の漢字教育館』に収納されています。